ぶすりと何かが刺さる音がした。
視線を下にずらせば、自分の身体に寄りかかる少女がいた。
「……嘘つき」
赤く腫らした目で、自分の顔を見る彼女に、内心で首傾げる。
見覚えのない子だった。
じわり、と衣服が濡れる感覚がする。
「わたしは、あなたを、見守っていたのに」
そう言って、走り去っていく。
「(……ああ、最近の手紙とかって、彼女のか)」
そんな後ろ姿を見ながら、ぼんやりと思う。
腹に突き刺さるナイフは深く、内蔵を傷つけてしまっているかもしれない。
それを抜き取って、橋の下の川へと投げ込む。
「…………」
栓が抜けたことによってあふれでてくるそれを手で押しとどめながら、川を眺めた。
流れは昨日の大雨で早くなっていた。
俺はいつものように軽薄な笑みを浮かべて、身を投げた。