「ヒューイ、マリーを頼んだ!!」
「―――おう!!」
後ろから聞こえてくる足音と怒号に振り返りながら懐から懐かしい重みのそれを取り出す。
走りながらだからか、標準は定まらないがそのまま発砲する。
悲鳴と一緒に足音が止んだ。暫く触っていないから腕が落ちたかと思っていたが、まだ運は俺に味方しているらしい。
「……ひゅう、相棒それどっからくすねてきたんだ?」
「くすねてなんかないさ、気に食わない男からのプレゼント!」
思い出すのはあの仮面の占い師。
今朝突然現れたかと思えば、“運命の輪は廻り出した。複数の世界が入り交じるイベントに、君達は、選ばれたのだよ”だなんて言葉とともに、カードと共に渡された。
ただ、あのカードはトランプではなく運命の輪が描かれたタロットだったのだが。
「―――走れるかい、青年」
「足には自信はないけど粘り強さには自信があるよ」
「上出来だ。レディ、失礼するよ」
座り込んでいた青年の顔によく似た少女を抱き上げる。
これくらいなら、俺の体力は持つ。
「逃げるぞ、皆!」