「…………」
スマートフォンで検索ページを開き、項目に覚えている名前を記入する。
あの名刺に書かれていた場所は確かこうだった。漢字は覚えていないが、読み方は覚えている。
「何調べてんだ?」
「場所を」
隣に座った彼に構わずそのまま虫眼鏡のマークをタップする。すると、検索トップに目当ての場所が出てきた。有名らしい。
「(そんな遠くないな、ここ)」
「……病院?」
「この前知り合った人がここに勤めているらしくて」
「……へえ?」
「今度会いに行ってみようかなと」
職員一覧のようなものを探して開く。その中にきちんと目当ての名前があることを確認した。
「また変なことに巻き込まれたんじゃねえだろうな?」
「……んん……、変……っちゃあ変でしたけど」
思い出すのはあの妙な時間。ついでに顔が赤くなる。なんだったんだろう、あの恋人自慢みたいなこと。
「今までと比べてそんなに変じゃなかったですよ」
突然会いに行くのは向こうからすれば迷惑だろうけれども、驚かせてみてみたい、ってのもある。
だが、医者というものは常時忙しいだろうなあ、とは思う。行く時間を考えなければならないだろう。
「今度行ってみるつもりです。少なくとも今週には」
日本語は上手くないけれども、またあの空間みたいに話が出来るといい、と思った。