あの依頼から数日が経つ。suitは変わらずで、たまに持ち込まれる依頼をこなしながら各々勝手に過ごしていた。
「……マアナ」
「や」
「嫌、じゃなくてな?」
そんな中、自分にぎゅうとしがみついて離れないマアナに困惑する。今日は幸運にも仕事がなかったため、久しぶりに買い物をしようとした。マアナを留守番にする訳にも行かないから連れていこうとしたのだが。
「じゃあ留守番するか?」
「いや。スウといっしょにいる」
「俺は買い物してえんだって」
「外いや」
「マジか……」
思わず天を仰ぐ。これが俗に言うイヤイヤ期か。
「で、ここに来たって訳ですね」
「お前は良くここに入り浸ってるだろ」
場所変わってsuitのアジト。といってもここでほぼ暮らしている状態になっているのは数名ほどだが。
目の前でお茶を飲んでいる『鬼』をジト目で見ながら自分もお茶を飲む。
それを見たマアナが模倣するようにお茶を飲んだ。
「……ヴァニタス、あなた最近仕事も忙しいでしょう。その時はどうしているんですか?たまに私が遊び相手になっていますけど」
「お前がいねえ時は『幽霊』に面倒を見させてる」
「選択ミスでは?」
「他の奴らの居場所は知らねえんだからしょうがねえだろ」
ふわりとお茶請けが浮いてマアナの手元に落ちる。横着すんな、と軽く叱って包装を剥がして渡せば嬉しそうに食べ始める。それを見た『鬼』は「あなたこそ甘やかしているのでは?」と言ったがそれを無視する。
「その時は大人しくしてるらしいんだがな」
「仕事がない日はそうじゃないと」
「しがみついて離れねえ。最近はずっとウーバーイーツとか宅配ばっか」
それにマアナには家以外の場所を見させたい。なので早急に外に慣れて欲しいのだが未だに家とアジトしか行き来できていないのだ。
「公園にでも行ければいいんだけどなァ」
ソファの背もたれに身体を沈める。柔らかいそれはゆったりと『天使』の身体を沈みすぎない所で受け止めた。無駄に金をかけていると思った。『幽霊』か『狼』あたりが用意したのだろう。たまに『悪魔』や目の前の『鬼』、『幽霊』が寝ているのを見ている。『悪魔』の時は一度わざと上に座ったことがある。
「スウ?」
「なんで外行きたくねえの?……大体分かるけど」
こてんと首を傾げたマアナの頭を溜息をつきながら撫でれば嬉しそうに笑う。あの研究所で酷い目にあっていたマアナが笑うだけでいいとは思うのだが、それではこの社会では生きづらいだろうから。
「公園……公園ですか」
「なんか案でもあるのかよ」
「皆さんでピクニックか花見をすればいいと思います」
名案を閃いた、とでもいうような顔で言う『鬼』に目が瞬いた。