01日 2月 2020
彼女がバレエを踊るように赤い金魚を踏み潰す。 一歩歩くごとに地面を跳ねていた魚は簡単に潰れていった。 「命って儚いのよ」 と彼女はそう笑って言う。 僕は彼女の頭上を見て答えた。 「ああ、そうだね」 ぐちゃ。
01日 2月 2020
「ほら」 先生が空を指す。 「月だ」 その先には丸く大きな月が浮かんでいる。 「そりゃありますよ。夜なんだから」 「はは、違う違う」 「?」 「私はね、月があると安心するんだよ」 「安心?」 「だってほら、月は太陽の光を受けて輝くだろう?」 「…ああ、そうでしたね」 太陽が昇らなくなって5年目の夜だった。...
01日 2月 2020
「二人きりで見る流星群は綺麗だろうか」 そう呟いた彼の顔を見る。 「もう二人きりでしょ」 ぴくりと彼の身体が震え、黒い瞳が私を見た。 「…ああ、そうだったな」 そう呟く彼はどこか遠くを見ていた。 彼は地球の蓄音機に成ってしまったらしい。今もこの廃墟の記憶を読み取っている。 雑踏が聞こえるらしい。 「此処は新宿だな」 「あの?」 「ああ」...
01日 2月 2020
つ、と指を肩の辺りを差される。 「それ」 焦点の合わない目でそいつは言う。 「いつまでつけてるの」 その言葉に溜息を吐いた。 「お前が死ぬまで」 「さきにあなたがしぬよ」 「だろうな」 もう何度も行った会話だ。毎回懲りもせずあいつは同じ話をする。 「わたしならけせる」 消して困るのはお前の癖に。...