明かずの夜


「ほら」

先生が空を指す。

「月だ」

その先には丸く大きな月が浮かんでいる。

「そりゃありますよ。夜なんだから」

「はは、違う違う」

「?」

「私はね、月があると安心するんだよ」

「安心?」

「だってほら、月は太陽の光を受けて輝くだろう?」

「…ああ、そうでしたね」

太陽が昇らなくなって5年目の夜だった。


太陽に焦がれる教授とそれを傍で見る教え子の話