音の鳴らないレコーダー


「二人きりで見る流星群は綺麗だろうか」

そう呟いた彼の顔を見る。

「もう二人きりでしょ」

ぴくりと彼の身体が震え、黒い瞳が私を見た。

「…ああ、そうだったな」

そう呟く彼はどこか遠くを見ていた。

彼は地球の蓄音機に成ってしまったらしい。今もこの廃墟の記憶を読み取っている。

雑踏が聞こえるらしい。

「此処は新宿だな」

「あの?」

「ああ」

私は廃墟を見渡した。

天に昇る瓦礫の塔があの摩天楼だったものなのだろうか。

「今も尚、慌ただしく通り過ぎる人々の声と足音が聞こえる」

「私には何も聞こえない」

「君はレコーダーじゃないから」

そう言って笑う彼はあまり好きじゃない。


滅亡した地球の記憶を読み取るだけの青年と、何故か死ななかった少女の話